グリーフ

先日リヴ・オンの研修に小田ちゃんと飛び入りで参加。

輪の中にも入れて頂きお話しもさせて頂いた。

クロージング、思いがけず涙が出て困った。医療関係の方の言葉を聞きながら夫も随分親切にして頂いていたなあと思い出したからだ。

最初の危篤を脱した時、座った、立てた、歩いたと喜んでくださったし、朝日と雪を見て「生きてる」と泣いた夫と一緒に泣いてくださった。夫の日常を支えてくださってたよなあと夫の笑顔とともに思い出した。

別れは辛いけどあの夫の最期の入院生活は宝物のような気がしている。

大事な大事な時間だったから、あの体験の上書きはもうあり得ない。人生の中でやらなければならなかった大きなことをし終えて今は余生を生きているような不思議な気持ち。

あの時間が遠くなってもやはり涙は出るんだなと思う。

輪の語りが小田の順番になった時に、小田が自分の夫の死を話した。

小田の夫を私たちも救えなかった。

小田を助けられなかった。

どんなにいろんな活動をしていても私たちには力なんかない。

無力だ。近くにいたのに何も出来なかった。

小田は夫の死からしばらくすると高い高い壁を自分の周りに立てた。小田の声は聞こえない。小田に声は届かない。

小田は語らない。語れないし語りたいと思わない、人前で泣くなんて出来ないと言った。

小田が高い高い壁の向こうで一人でうずくまっていることを知っていても私たちは何も出来ない。

おーい、おーい!と壁を叩かない。壁の向こうに小田がいることだけを確認する。

壊れるかもしれない、潰れるかもしれない。

それでも私たちは壁のこちらで待つしかないのだと思っていた。

そんな時間を経て、今もなお葛藤しながらの小田が初めて語った。

聞きながら込み上げる物があった。

小田が語ってなんで私が泣くんだ⁉︎と笑える。

私も小田もまだまだこの道を歩いていくのだと思う。日々思いは変わるし、ふと引き戻されることもある。

それもありで、どう思ってもいいと知っておこう。

「私たちは無力だ」と自覚することは絶望ではない。その痛みを胸に刻もう。

子どもの時に父の自死を助けられなかった私はその痛みを胸に刻むことを得て自分の罪を手放したのだと思う。

良いも悪いもなく事実だけを受け止める。

私たちは無力だ、だから、ただ信じて祈る。

誰かの葛藤を邪魔せずにただそのことを知っている人になろう。

小田の夫が小田に残した言葉。

「笑顔が好きでした」

小田ちゃん、私もあなたの笑顔が好きだ。