代表ご挨拶

特定非営利活動法人グリーフサポート・リヴ
代表理事 佐藤 まどか

1992年子育て支援という言葉がまだまだ一般的でなかった頃、子どもの育ちを守るために孤立している母親たちと繋がりたいとの思いから私たちは「リヴ」を立ち上げました。

そこには社会から母子カプセルでポンとはじき飛ばされ孤軍奮闘している女性たちがいました。キャリアを捨て家庭の中に入ったら突然社会からも家族からも要求が変化し「自分が何者なのかわからなくなる」「母性という言葉に縛られ生き方が分からなくなる」「子育てが辛い」そんな言葉を多く聞きました。

私たちは自分達の子育てを振り返ることも含め母親たちと語り合い「ひとりにしないこと」に力を注ぎました。

母親たちからは子育てだけではなく夫婦関係についても語られました。それに伴い私たちはシングルマザーの会を立ち上げ離婚に悩む女性や離婚後の悩みを語り合い時には具体的な支援に繋げるようになりました。

子どもの気持ちが置き去りにならないように子どもが親のケアをしたり心配を抱え込んだりしないように大人は大人で手を繋ぎ、決して子どもを親にしないことをお伝えし、子どもは守られるべき存在であることをしっかりと意識してもらいました。子どもの育ちを守ることは社会の大きな責任なのです。子どもを守るために私たち大人は支え合わなければいけないのです。ここでも「ひとりにしないこと」がキーワードになりました。

そして子どもの育ちを考える時、かつて子どもであった自分たちの育ちにも触れることになりました。

私自身の自死遺児としての体験を語る場として親を自死で亡くした方の会(当時は親の自殺を語る会)を立ち上げました。「子どもには子どもの気持ちが大人には大人の気持ちがある」ことを確認し「語って来なかった悲しさや辛さや懐かしさや親への怨みを吐いてもいいこと」を体験しました。それは一人では出来ないことでした。同じ体験をしていなくてもそこに気持ちを寄せてくれる人の存在、同じような体験をして気持ちを語り合う人の存在が押し殺していた気持ちを消化させる大きな力となりました。

私は子ども時代の自分をやっと許すことが出来たのです。親の自死を助けることも出来なかった自分、親が自死を思いとどまるに及ばなかった存在の自分、家族を再生させるのに何の役にも立たなかった自分を生きていてもいい自分であると感じることが出来たのです。

自殺予防とは何でしょうか?

リヴは子どもの育ちを守ることを大きな柱として相談活動を行い、子どもの育ちの大きな環境要因である家族を支援してきました。

大人も子どもも存在していい自分を感じ、社会の中に心の居場所を持つこと、「ひとりにしないこと」が生きていく力を育むことに繋がるのではないでしょうか?
「ひとりにしないこと」は「ひとりでいたいこと」を否定するものではありません。ひとりの時間も選択出来、ひとりでいることの快適さも知り、必要な時に繋がれる場所が人を支えるように思います。

グリーフサポート・リヴは人と人が繋がれるそんな場所でありたいと願います。

どこまでカテゴリーに分けても同じ体験をした人、同じ悩みを持つ人を見つけることは出来ません。人は唯一の存在だからです。でも似た体験、似た悩みを持つ人には出会えるでしょう。

けれど必要なのは似た体験も似た悩みも無い人たちが寄り添おうとする姿勢、「わかるはずもない」と言う体験者に「わからない苦しさを持って近くに居ようとしてくれる」人かもしれません。

「わからない」ことで扉を閉めてしまわない社会を一緒に作って頂けたらありがたいと思います。そんな社会を目指して私たちは進んでいきたいと思っています。

グリーフサポート・リヴの活動をどうぞ見守っていただけますようにお願い申し上げます。